Project
渋原XROSS
Scope
Planning
Design
街のアイデンティティを積層する



































本計画は、個人オーナーによる新築テナントビルの開発プロジェクトである。計画地は、渋谷・原宿・表参道を横断する明治通りに面し、多種多様なヒト・モノ・コトが行き交う都市の中心に位置している。一方で、裏通りには住宅街の穏やかな雰囲気も残っており、賑わいと静けさ、商業性と生活性が共存する、この場所ならではの重層的な都市環境を形成している。オーナーから求められたのは、この場所らしさを体現しながら、新たなランドマークとなる建築を実現することであった。同時に、事業性を踏まえた柔軟で持続性のある計画であることも重要な条件であった。クライアントとの対話を重ねる中で、「場所性」「柔軟性」「収益性」、そして「入居テナントにとって価値ある環境を提供すること」が、本計画における重要な軸として整理された。具体的には、明治通りに面した1・2階は独立性を高め、単独店舗としての出店が可能な構成とすることや階高を最大限確保し、テナント空間の気積を広げることで、面積以上の開放感や価値を生み出すこと。さらに、外壁面にはデジタルサイネージを設置し、街への情報発信機能を持たせることで、建築そのものが都市のメディアとなり、認知性と収益性を高めることであった。これらのポイントを踏まえた上でこの場所らしさと新たなランドマークとなる建築の在り方を模索した。 当該地は北西に住宅街が隣接し、日影規制の制約を考慮した計画が前提となることから、先ずはこの地に計画できる建築のボリューム検討を行った。その結果、地上12〜20mの範囲に“くぼみ”を持たせることで、住宅地への影響を抑えながら、それ以外の上下層には自由度の高い空間構成が可能となることが分かり、このポイントを起点にボリュームを形成している。一般的なテナントビルでは、路面性を持つ低層部や眺望に優れた上層部に価値が集中し、中間層は均質な貸床として計画されることが多い。しかし本計画では、日影規制によって生まれた“くぼみ”を制約ではなく、新たな価値を生む空中層として捉え直した。空中層は上下階よりもコンパクトな区画とし、異なるターゲットを受け入れる柔軟なテナント空間を構成すると同時に、くぼみによって生まれた余白を3方向に開かれたバルコニーとして計画することで、この階層ならではの環境価値を創出している。また、デジタルサイネージは空中層上部の南西角に配置することで、渋谷方面と原宿・表参道方面の双方へ情報発信でき、都市の活動を映し出す建築の表情として構成している。サイネージ面に囲われた空間は、都市に対して開かれた“表”の顔を持ちながらも、北西側の住宅地へ向けては静かでゆとりある風景が広がり、都市の喧騒と静寂が共存する特徴的な環境を生み出している。さらに上層部では、都心ならではの眺望を最大限活かすため、3面開放の構成とし、最上階には周辺の都市文化とも呼応するルーフトップテラスを計画した。これらの構成要素を成立させることと、クライアントから求められているテナント空間(気積)をできるだけ広く確保するべく、柱断面を抑える構造形式を構造家と共に検討し、最小限の構造体によって都市へ開かれた余白を最大化した。 街に開かれた低層部、多様な使い方を受け入れる空中層、情報発信と静けさが共存する中間層、都市の眺望を享受する上層部といった、多種多様な環境が立体的に積層する建築が生まれた。それは、渋谷・原宿・表参道という街が持つ多様な個性やアクティビティを、建築として再編集した“都市の断面”でもある。ここ「渋原XROSS」は、街の新たなランドマークとして、“形態的な象徴性”ではなく、“多様な都市活動を受け止め続ける器”としてのランドマーク性を生み出していく建築となることを目指している。





