Project

Li'a

Scope

Design

距離を生む庭

本計画は、以前に設計した美容室「Le/a」のオーナーが新たに展開するヘッドスパの計画である。計画地は既存店舗からほど近い都市部に位置し、高いアクセス性と人通りを有する一方で、テナント区画は間口の狭い3階建てビルの最上階にあり、階段でのみアクセスする構成となっている。そのため都心にありながらも、通りからの視認性や即時性からは少し距離を置いた場所にあった。オーナーが求めたのは、単なるリラクゼーション施設ではなく、日々の疲れや緊張から解放され、自分自身と静かに向き合うことのできる場である。ここでは、この場所が都市の中心にありながらも最上階という特性を持つことに着目した。多くの人や情報が行き交う都市の中で、あえて少しだけ時間をかけて辿り着くこの場所は、街との間に緩やかな距離を生み出している。その距離こそが、この場所ならではの体験価値になるのではないかと考えた。そこで本計画では、「距離を生む庭」をコンセプトに掲げた。ここでいう庭とは、単に植物を配置した空間ではなく、都市の喧騒や日常から離れ、他者との適度な距離を保ちながら、自分自身の感覚へと意識を向けるための余白である。訪れる人が都市から、自分の日常から、そして時には自分自身を縛る思考から少しだけ距離を取り、心身を整えることのできる場所を目指した。 テナント区画は、間口が狭く奥行きのある構成であり、入口は1階から続く階段の先、空間の中央に位置している。当初、4つの個室とカウンセリングルーム、受付、バックヤードなど、必要となる機能を配置すると、限られた面積の中で窮屈な空間となることが予想された。また、各個室に面する既存窓も、ヘッドスパに求められる光環境を考慮すると閉じる必要があり、閉鎖的な空間になってしまうという課題があった。そこで本計画では、こうした制約を空間の価値へと転換することを試みた。まず、中央に位置する受付エリアを空間の核として計画し、ここを都市とヘッドスパを繋ぐ「最初の庭」と位置付けた。階段を上り辿り着くこの場所は、都市の喧騒から離れ、非日常へと意識を切り替えるための緩衝空間となるだけでなく、その先への意識と期待感を生みだしている。さらに、各個室と既存窓との間には小さな庭を挿入した。窓を単純に塞ぐのではなく、街と個室のあいだに緩やかな余白を挿入することで、限られた空間に奥行きと広がりを与えている。また、それぞれの庭は異なる表情を持ち、個室ごとに異なる体験を生み出している。自然光は直接取り込むのではなく、庭を介して柔らかく拡散させることで、静かで落ち着いた光環境を実現した。その結果、窮屈で閉鎖的な空間ではなく、趣をも感じさせる空間を構築している。 都市から受付へ、受付から個室へ、そして個室から庭へ。幾重にも重なる距離の層を通して、訪れる人の意識は少しずつ日常から解放され、自分自身へと向かっていく。ここでは、植物を眺めるための庭ではなく、都市から離れるためでもなく、自分自身へ近づくためにある。

竣工|2024 所在地|大阪 用途|ヘッドスパ 構造・規模|木造・地上3階 面積|74.00㎡ クライアント|株式会社N's 施工|株式会社リグランツ 庭|緑空間制作所 設計・監理|team raw row 写真|大竹央祐
© 2026 team raw row inc. All Rights Reserved.
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