Project
Le/a
Scope
Design
多様な広がりを生む壁











本計画は、クライアントが独立後に初めて開業する美容室の計画である。当該地は大阪の中心部に位置し、働くと暮らすが混在するエリアでありながら、公園や小学校があるなど、都市の中にも穏やかな生活の気配を感じる場所であった。上階は幅広い世代が住まう集合住宅であり、地域との関わりを意識せざるを得ないのこ場所から開業することを決めたクライアントは「お客さんや地域の方が気軽に立ち寄れ、喜びや楽しみを届けられるお店にしたい」という想いから、店名を Le’a(=喜び・楽しみ)と名付けていた。そして、限られた予算の中で掲げられた要望は、お店の顔となる外観づくり、入りやすさ、そしてお客さんが心地よく過ごせる空間であること。これらの想いと条件を丁寧に読み解き、店名に込められた“Le’a”の意味を空間として体現することを目指した。 テナント区画は、間口の半分が前面道路に張り出す逆L字型のテナント形状でありながら、建物全体が道路からセットバックした位置にあるため、通行者からの視認性をいかに確保するかが重要な課題であった。そこで、美容室としての存在を明確に示すため、道路に最も近いエリアをセット面として計画し、大きな開口を設けることでお店の顔を形成した。これにより、内部の様子が外に滲み出し、街を歩く人々に自然と美容室であることを認識させることを意図している。一方で、入口が道路から奥まった位置となるため、道路に向かって開くように壁を斜めに配置した。これにより、来訪者を店内へと誘導する動線をつくり出すと同時に、バックヤードとセット面エリアの構成を整理し、陽の光を内部へ導きながら空間全体に拡がりと明るさを与え、心地良く過ごせる空間を創出している。本来“仕切る”役割をもつ壁は、ここでは光を拡げ、街へ開く装置として機能している。閉じるのではなく、光・視線・人の動きを通して街とつながる壁をデザインすることで、小さな店舗でありながらも多様な広がりを感じられる空間を実現した。 また、高さ約4mの開放的な内部空間に対し、デザインの操作範囲を、かつて天井が張られていた高さ3mの仕上げ痕跡ラインに設定した。この“高さ3mのライン”を新たな基準面とすることで、外部と内部、まちとお店を緩やかにつなぐ境界をつくり出している。来訪者が店内に入るにつれて、鏡や椅子といった家具が次第に身体のスケールへと寄り添い、素材の手触りや光の質感を通して空間が親密さを帯びていく。こうしたスケールの変化を伴う空間体験によって、訪れる人に“開放感と居心地のよさが共存する場所”を感じてもらえるよう意図した。開かれた高さと、人の身体に近い手触りのスケール、そのふたつの関係を丁寧に調整することで、まちに開かれながらも、心地よく包み込む美容室を目指した。




